ブッカー賞に輝いた カズオ・イシグロの初短編集に、新進気鋭の女性演出家・小川絵梨子が挑む!
「日の名残り」「わたしを離さないで」で世界的に著名な英国の作家、カズオ・イシグロが2009年に発表した自身初となる短編集が本作「夜想曲集」だ。これまでに書きためていた短編を集めたのではなく、「短編を書くつもりで書いた」という意欲作だけあって、収められている5編はどれもが独立した作品としての完成度、面白さを持ちつつも、テーマと状況はつながっていて全体で一つの世界を形成している。この5編の中から、「老歌手」「夜想曲」「チェリスト」の3編を選び、一つの戯曲として再構築するのは“井上ひさし最後の弟子”と言われ、確かな筆の力で注目を集める劇作家・長田育恵。そして、演出を手掛けるのは、2度の読売演劇大賞優秀演出家賞に輝く新進気鋭の演出家・小川絵梨子。研ぎ澄まされた感性がぶつかり、これまでにない舞台が誕生することになりそうだ!
人生の夕暮れに直面し心揺らす人々を切なくユーモラスに描く至極の3作品
- 「老歌手」
- 往年の名歌手が、結婚27年目にハネムーンで訪れたベネチアを再訪。ある夜、街中のカフェで偶然出会ったギタリストの“私”に伴奏を依頼し、ゴンドラに乗って、別れる寸前の妻のいる窓べの下でセレナーデを歌う。
- 「夜想曲」
- 才能はあるのに売れない醜男のテナーサックス奏者の“おれ”は、別れた妻とマネージャーに説得され、勢い整形手術を受ける。施術後に包帯で顔をぐるぐる巻きにした“おれ”は、隣室のセレブ(「老歌手」に登場したくだんの妻と同一人物)と共に、とんでもない夜の散歩を体験する。
- 「チェリスト」
- ストリート・ミュージシャンの“私”は7年ぶりにそのハンガリーの若者を見かける。かつて彼は自らを大家という41才のアメリカ人女性から、特別なチェロの特訓を受けていた。やがて別れとお互いの再出発の時が訪れる。